有価証券届出書

有価証券届出書とは

有価証券届出書とは、有価証券の募集または売出しをする際に、金融商品取引法に基づき当該有価証券の発行者が内閣総理大臣へ提出することが義務付けられている法定開示書類です。
発行(売出)価額の総額が1億円以上の場合や、勧誘を行う相手方の人数が50名以上の場合など、一定の基準に該当する場合に提出が必要となります。 IPOにおいては、取引所の審査中から上場承認までに、上場基準を充足するためのファイナンスにおいて、初めて作成・提出することが一般的ですが、これに限らず、IPO前の資金調達フェーズにおいても該当要件を満たす場合には作成・提出が必要となることに留意が必要です。

記載内容

簡単に言うと、該当要件を満たす有価証券の募集または売出しというものは、一般投資家が十分に投資判断を行うことができるような情報を提供する必要があるとの前提に立ち、初めて提出する有価証券届出書には、以下の情報を記載し開示します。

  • 証券情報:発行する株式の内容や株式募集の方法及び条件等
  • 企業情報:財務諸表・事業の内容・事業等のリスク等
  • 特別情報:連動子会社の最近の財務諸表等
  • 株式公開情報:特別利害関係者等の株式等の移動状況等
  • 監査報告書:金融商品取引法に基づく監査証明(2事業年度分)

なお、IPOの審査で作成するⅠの部(「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」)は、有価証券届出書の記載様式に準じていることから、企業情報や株式公開情報については、先にⅠの部を作成することで、後の有価証券届出書の内容として引き継がれます(Ⅰの部は、上場承認時に証券取引所より公表書類として開示されます)。

いつまでに作成し、いつまでに提出する?

有価証券届出書は会社で作成したものをそのまま開示・提出できるというわけではなく、事前に管轄の財務局に相談して、提出日程や記載されている内容の確認を行う必要があります。
IPOにおいては、取引所審査期間中に財務局への相談が開始するため、単に会社が作成するだけでなく、主幹事証券や取引所の指摘事項や要望事項を踏まえ、財務局からの指摘に対しての修正を上場承認日(実際は有価証券届出書の印刷稿了日)までに行う必要があります。その後、上場承認のスケジュールに合わせて、取締役会決議後日に有価証券届出書を提出することになります。
この点、取引所審査と同時並行で進めていきますのでタイトなスケジュールとなります。

有価証券報告書との違い

有価証券報告書との違いは、有価証券届出書は有価証券の募集または売出しをする際に提出するもので、一方の有価証券報告書は有価証券届出書の提出等により継続開示義務を負った発行会社が毎期事業年度終了後から3か月以内に、定期的に提出が求められているものです。
よって、有価証券報告書の内容は、有価証券届出書における募集要項等が記載された「証券情報」を除いたものに近似しており、「企業情報」を中心に記載します。

なお、Ⅰの部と有価証券報告書との違いはこちらをご覧ください。

目論見書との違い

目論見書とは、有価証券の募集あるいは売出しにあたって、投資判断に資する重要情報(有価証券の発行者や発行する有価証券などの内容)を記載した書類であり、IPOに限らず投資家に対して投資勧誘する際は、金融商品取引法により投資家に対して交付が義務付けられています。内容としては、有価証券届出書を基本としているので大きな差はありませんが、投資家向けということもあり、写真・挿絵・グラフを含めた構成にして分かりやすく作成されます。こちらも有価証券届出書と同時進行で、取引所審査中に作成が必要になります。

有価証券届出書・目論見書の作成については、取引所審査中に行われることもあり、後に公表されるⅠの部についての取引所から指摘・修正・加筆対応を行いつつ、有価証券届出書・目論見書への反映と主幹事証券会社・財務局からのコメントについての対応など、短い期間で取引所審査対応以外にも多くのタスクが発生します。

響きパートナーズでは、豊富な実績と経験に基づいて、取引所審査の回答支援だけでなく、Ⅰの部や有価証券届出書・目論見書の取引所審査での指摘や財務局からのコメントに迅速かつ適切に対応することが可能です。

響きパートナーズ株式会社

響きパートナーズは、IPO支援を行なうコンサルティング会社です。ベンチャー企業の経営支援・IPO支援のプロフェッショナルとして、毎年、国内で上場する企業のおよそ10社に1社をご支援しています。当社では、IPOに関する課題をお持ちのお客様に、アドバイスだけでなくコンサルタントが実際に手を動かして、課題解決に向けて伴走支援いたします。

監修者

井熊 実

野村證券公開引受部、㈱エイチ・アイ・エス上場準備PJ統括、エイチ・エス証券取締役、事業会社取締役、SBI証券執行役員などを歴任し、2021年に響きパートナーズに参画。取締役パートナー。

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