上場廃止基準

上場廃止とは

株式の上場廃止とは、金融証券取引所に上場している会社が、取引所の上場廃止基準に抵触したことにより上場廃止が決まる場合、または、会社自らが申請し上場を取りやめる場合に、当該会社の株式が金融証券取引所の売買対象から除外され、市場において当該会社の株式の取引が行われなくなることです。

国内の各証券取引所では上場廃止基準として様々な条項を定めており、当該会社がそれらの基準に抵触する恐れがあると判断した場合、投資家に周知するため監理銘柄に指定します。その後、上場廃止が決定した場合には、整理銘柄に指定され一定期間後に上場廃止となります。

上場廃止基準の概要

例えば、東京証券取引所(以下「東証」という)の上場廃止基準には以下の項目があり、いずれかに該当した場合は上場廃止となります。

・上場維持基準への不適合

・有価証券報告書等の提出遅延

・虚偽記載又は不適正意見等

・特別注意銘柄等

・上場契約違反等

・その他(銀行取引の停止、破産手続・再生手続・更生手続、事業活動の停止、不適当な合併等、完全子会社化、反社会的勢力の関与、等)  

詳細は東証ホームページ(上場廃止基準の概要)をご参照ください。

上場維持基準に係る経過措置

東証では2022年4月の市場再編時から、上場維持基準を満たしていない会社の上場を暫定的に認める経過措置を取ってきました。この経過措置が2025年3月以降に順次終了します。一定の基準を満たす会社は、2025年3月1日より前の基準日まで、緩和された上場維持基準が適用されます。

現在実施されている経過措置の概要

経過措置の適用を受けている会社は、2025年3月1日より前の基準日まで、以下の上場維持基準が適用されます。

(東証ホームページ「上場廃止基準の概要」より抜粋)

なお、上記の基準に適合しない状態となった時から、原則1年内に上記基準に適合できなかった場合は、上場廃止となります。また、流通比率5%未満となった場合にも上場廃止となります。

経過措置が適用されている会社においては、2025年3月1日以後に到来する上場維持基準に関する基準日から本来の上場維持基準が適用されます。上場維持基準に適合していない場合は、原則1年間の改善期間に入り、改善期間内に基準に適合しなかった場合は監理銘柄・整理銘柄指定期間を経て上場廃止となります。

(東証ホームページ「改善期間等一覧」より抜粋)

なお、2026年3月1日以後に到来する基準日を超える時期を終了期限とする計画を開示している会社(「超過計画開示会社」)については、改善期間終了後に監理銘柄に指定され、指定期間中に基準に適合した場合は指定解除となる一方で、適合しなかった場合は上場廃止となります。

上場維持基準に適合していない会社の状況(2025年1月時点)

2025年1月に東証が公表した資料(改善期間等一覧「計画期限一覧(2025年1月15日公表)」)によると、経過措置の適用を受けており、本来の上場維持基準に適合していない会社は、プライム市場69社(4.2%※1)、スタンダード市場152社(9.5%※1)、グロース市場50社(8.1%※1)の計271社(7.0%※2)となっています。

※1)2024年12月31日の各市場の上場会社数に対する割合

※2)2024年12月31日の各市場の上場会社数合計に対する割合

上場維持基準に適合できないが上場は維持したい! 残された手段は

上場維持基準の達成が困難ながら上場を維持したい場合、市場区分の変更や他の取引所との重複上場、TOKYO Pro Marketへの上場など、形を変えて上場を維持することが残された選択肢です。
2024年3月末時点における経過措置適用会社(上場廃止予定会社等は除く)に対して東証が実施した調査によると、回答会社の75%が適合に向けて課題を感じており、その課題としては「流通株式時価総額」(プライム市場上場企業、スタンダード市場上場企業)、「時価総額」(グロース市場上場企業)が主です。
また、適合できなかった場合の具体的な方策として、プライム市場上場企業やグロース市場上場企業では「市場区分の変更」、スタンダード市場上場企業では「他の取引所との重複上場」を検討する傾向にあることがわかりました。

※2024年7月実施、対象会社269社のうち217社より回答、出典は「経過措置適用会社の状況について」(東京証券取引所 上場部)2024年8月19日公表

達成困難な「流通株式時価総額」「時価総額」、市場区分で解決を狙う

プライム市場上場企業では100億円以上、スタンダード市場上場企業は10億円以上、グロース市場上場企業は5億円以上の流通株式時価総額が必要であり、さらに、グロース市場上場会社のうち上場から10年経過した会社には時価総額40億円以上が求められています。
上述の東証の調査の結果を踏まえると、プライム市場上場企業とグロース市場上場企業で上場から10年が経過した会社は、スタンダード市場へ区分変更するというのが有力な選択肢となってきます。
こうした状況を踏まえ、東証は2025年1月に上場会社に向けてスタンダード市場への市場区分変更に関する説明資料を公開するなど、市場区分変更についての上場会社への理解を促す取り組みを行っています。

スタンダード市場への市場区分変更で注意したいポイント

スタンダード市場へ市場区分の変更を希望する場合、遅くとも改善期間の末日までに申請を行う必要があります。
新規上場時と同様、市場区分変更申請に際しては所定の提出書類を準備し、東証の審査を受ける必要がありますが、IPO時と異なり主幹事証券会社による上場適格性調査に関する調査報告書(推薦書)はなくても申請可能となっており、会社で準備・申請することができます。
また、通常、審査期間は3カ月以上が目安とされていますが、最近5年間において、実効性の確保に係る措置やその他上場管理上の措置の適用を受けていない場合など、東証が適当と認める会社は、審査期間を「2カ月以上」に短縮される可能性があります。あわせて、申請時に提出が必要な書類もIPO時より範囲が狭められており、例えば「市場区分の変更申請のための有価証券報告書(IIの部)」は「株式等の状況について」をはじめとする記載事項が省略可能になります。

市場区分の変更審査を希望する会社は、想定される審査内容の確認などのため、東証へ事前の相談が必要です。自社の市場区分の変更スケジュールを検討のうえ、申請の6カ月前までをめどに東証が設ける相談窓口へコンタクトすることが求められており、そこから申請書類の準備など本格的な準備がスタートします。

響きパートナーズでは、市場区分の変更申請のための有価証券報告書(IIの部)の作成や、
市場区分の変更に係るプロジェクトマネジメントにおいて豊富な実績がございます。
東証相談へのアテンド等のご支援も可能ですので、まずはお問合せください。

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響きパートナーズ株式会社

響きパートナーズは、IPO支援を行なうコンサルティング会社です。ベンチャー企業の経営支援・IPO支援のプロフェッショナルとして、毎年、国内で上場する企業のおよそ10社に1社をご支援しています。当社では、IPOに関する課題をお持ちのお客様に、アドバイスだけでなくコンサルタントが実際に手を動かして、課題解決に向けて伴走支援いたします。

監修者

井熊 実

野村證券公開引受部、㈱エイチ・アイ・エス上場準備PJ統括、エイチ・エス証券取締役、事業会社取締役、SBI証券執行役員などを歴任し、2021年に響きパートナーズに参画。取締役パートナー。

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