デューデリジェンス

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(DD)は、事業価値や企業価値に必要な情報を収集するとともにリスク要因を抽出し、事業統合上の課題を抽出整理するために、一般的にビジネス、財務、税務、法務、労務の領域に対して行われます。
それぞれの詳細は以下のとおりです。

ビジネスデューデリジェンス(Business Due Diligence)

定義

対買収対象企業(以下、対象企業)の事業モデル、属する市場動向、市場におけるポジショニング、競争力、成長性を多角的に分析し、事業価値と潜在リスクを評価するデューデリジェンス

目的

対象企業が有する競争力と成長ポテンシャルを評価し、想定買収対価が適切な水準かを判断するための情報を得ることに加え、PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合効果を最大化するプロセス)に繋げること

調査項目・プロセス(主な例)

  • 市場動向調査: 市場規模、業界トレンド、KSF(Key Success Factor:事業を成功させる重要成功要因)、顧客KBF(Key Buying Factor:顧客が商品やサービスの購入を決める際に重視する要素や判断基準)を分析し、成長性や潜在リスクの前提となる市場性を理解・評価
  • ビジネスモデル分析: 対象企業の収益源、収益構造、バリューチェーン等を確認し、競争優位性を評価
  • 競争環境とポジショニング評価: 業界の競争環境と対象企業の競争力(シェア、技術力、ブランド力 等)を調査し、対象企業の市場におけるポジショニングを評価
  • 製品・サービス評価: 対象企業が有する製品/サービスラインナップ、ライフサイクル、顧客KBFとの親和性等を評価
  • 顧客基盤の頑健性評価: 主要取引先や顧客の多様性、依存度、取引の継続可能性を評価

財務・税務デューデリジェンス(Financial and Tax Due Diligence)

定義

対象企業の資産・負債の実態(財務動向、偶発債務)、正常収益力(業績動向)、資金繰り、税務処理を確認し、財務健全性、収益力、キャッシュフロー創出力、税務リスク等を評価するデューデリジェンス(税務デューデリジェンスは、財務デューデリジェンスとは別途個別に実施する場合あり)

目的

・実態純資産、正常収益力を評価すること

・財務および税務リスクを可視化し、買収条件(価格・補償条件 等)の調整を図るための情報を提供すること

調査項目・プロセス(主な例)

  • 財務諸表の概括分析: 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を精査し、収益性、財務動向等を把握
  • 正常収益力評価: 売上、各種費用、利益水準やマージンを多面的に分析し、損益構造を評価。対象企業が通常の経営環境で生み出せる収益力を評価するため、一時的な売上や費用、特別利益や損失など、将来の収益力に影響を与えない一過性の要因は排除し、継続的な正常収益力水準を評価
  • 実態純資産評価: 対象企業の財務諸表上に示された純資産(株主資本)を、実際の価値に近い形で再評価。具体的には、帳簿上の資産・負債から含み損益や評価の過不足を調整し、対象会社が有する実質純資産を算定・評価
  • Net Debt(純有利子負債)評価:企業価値は資金提供者である株主及び債権者の両者に帰属する価値であり、株式価値は、企業価値から債権者価値(Net Debt)を控除して評価することになります。その株式価値評価の際に、企業価値から減算する項目であるNet Debtを評価
  • 資金繰り評価:今後のキャッシュフローの予測を基に、財務リスクや必要な最低運転資本を評価 
  • 税務リスク評価: 税務申告の正確性、過去の税務調査結果、未納税金の有無、グループ内取引、移転価格税制などの国際課税など、顕在的・潜在的な税務上のリスクを調査・評価

法務・労務デューデリジェンス(Legal and Labor Due Diligence)

定義

対象企業が関与する法的事項や契約、規制への遵守状況を調査し、顕在化した法的リスクや潜在的な法的リスクを評価するデューデリジェンス(労務デューデリジェンスは、法務デューデリジェンスとは別途個別に実施する場合あり)

目的

法的リスクを事前に把握し、買収条件の交渉材料やリスク対応に必要な情報を収集すること

調査項目(主な例)

  • 契約関係: 主要顧客との販売契約、仕入先契約、業務提携契約などを確認し、不利益な条項や法的に問題がある条項が含まれていないかどうかを調査。特に重要な契約についてCOC条項(経営権・支配権の変更・移動が生じた場合、契約内容に制限がかかったり、他方の当事者によって契約を解除することが可能となる条項)が含まれていると、M&Aによって当該契約が終了し、対象企業の価値が毀損されるおそれがあるため、重点的に調査・評価
  • 資産・負債:所有する財産の種類、金額、対抗要件の具備状況、担保権の設定状況、債権回収の可能性、知的財産権などの有効性、ライセンスの状況、不動産に関する権利関係、クレーム状況等を調査・評価
  • 許認可: 対象企業が許認可を要する事業を営んでいる場合、必要な許認可の種類、取得および維持の状況、許認可の更新スケジュール、更新にかかる費用等を調査・評価
  • 法令遵守:対象企業に適用される法令の遵守状況につき、適用される法令の種類、ルールの内容、法令違反による行政指導、行政処分、刑事罰などの状況等を調査し、法的なリスクレベルを評価
  • 株主: 対象企業の株主状況に関して、発行済株式の種類、数、議決権の保有状況(特に、買収によって確実に支配権を取得できること)等を調査・評価 
  • 労務: 対象企業に勤務する従業員の労務管理について、労働法令の遵守状況・労働契約・労使協定・労働協約の締結状況・就業規則その他の社内規程の整備状況・労使紛争の状況等を調査・評価

 

響きパートナーズ株式会社

響きパートナーズは、IPO支援を行なうコンサルティング会社です。ベンチャー企業の経営支援・IPO支援のプロフェッショナルとして、毎年、国内で上場する企業のおよそ10社に1社をご支援しています。当社では、IPOに関する課題をお持ちのお客様に、アドバイスだけでなくコンサルタントが実際に手を動かして、課題解決に向けて伴走支援いたします。

監修者

伊東 誌郎

公認会計士。有限責任あずさ監査法人にて、上場会社の法定監査およびIPO監査、ショートレビュー、その他アドバイザリー業務等に従事。2018年に響きパートナーズに参画、パートナーを務める。

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