申請期(N期)
上場申請する期を指します。
主幹事証券会社による証券審査をクリアし、上場申請書類の完成及び取引所審査をクリアすると、上場基準のうち形式要件といわれる株主数や流通株式等を満たすためのファイナンスを実施するという条件付で上場承認が行われ、このファイナンスの実施をもって、晴れてIPOを迎えます。
上場申請までの期間
主幹事証券が実施する「証券審査」は、正式には「上場適格性の調査」といわれます。IPO準備企業は、証券取引所に上場申請する際に、主幹事証券による当該調査に基づいた推薦書を取引所に提出する必要があることから、主幹事証券は、取引所審査と同等の内容を実施します。
この主幹事証券による証券審査は、およそ6か月程度を要します。上場申請書類(下段参照)を含む審査資料を審査部門に対して提出後、審査部門はその審査資料を精読し、不明事項や確認事項について取り纏めた質問書を作成し、送付されます。主幹事証券によって審査の進め方にスタイルの違いがあり、質問書をテーマ別に分けて複数回実施するところもあれば、一回の質問書ですべてのテーマを網羅して実施するところもあります。いずれも決められた期限内に書面で回答することが求められ、その回答を踏まえた役職員へのヒアリングが実施されます。そして、その際に新たに生じた確認事項や追加質問は、その後随時やり取りが実施(3回~4回)されます。また、審査中には、監査法人や社長・監査役・独立役員への個別ヒアリング、必要に応じて取引先へのヒアリングも実施されます。
こうした過程を経て、審査部門の理解が及ぶことで、主幹事証券として上場申請に進んでも良いか(推薦書を出しても良いか)どうかの可否が判断できた段階で審査が完了します。
証券審査をクリアすると、上場申請書類一式を揃え、取引所に上場申請を行うことで、取引所審査が始まります。取引所審査は通常2か月~3か月程度(グロース市場の標準審査期間は2か月)要します。流れとしては、証券審査と同様ですが、グロース市場の場合はテーマ別に3回に分けて質問・回答を経て、社長・監査役・独立役員に対してそれぞれ面談が実施されます。
一方で、この取引所審査期間には、形式要件を充足するファイナンスのために、財務局への有価証券届出書の事前確認を依頼したり、当該届出書の記載内容に関するコンフォートレター(引受事務幹事会社への書簡)の依頼を監査法人に行います。
なお、上場申請書類としては、次のような書類の提出が求められます。必要となる書類は、上場しようとする市場によって異なります。
【プライム市場・スタンダード市場】
・新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)
・新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)
【グロース市場】
・新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)
・新規上場申請者に係る各種説明資料
上記以外に、いずれの市場において、定款・規程類、中期経営計画、各種決算資料、税務申告書、各種議事録、監査役監査資料、内部監査資料、コーポレート・ガバナンスに関する報告書など多岐にわたります。
上場申請後から上場承認までの期間
上場審査対応に加え、ファイナンスに関する準備を行います。
証券取引所から上場承認を受けると対外公表され、上場基準である形式要件を満たすためのファイナンスを実施します。その時に向けて、有価証券届出書、目論見書やロードショーマテリアルの作成等の準備を行います。
ロードショーマテリアルとは、上場承認を受けた会社が、実施するファイナンスを成功に導くため、機関投資家向けの説明会(ロードショー)を行う際に用いるプレゼンテーション資料のことで、有価証券届出書の記載内容を基本とし、図・グラフ・写真等を加えてスライド化したものであります。なお、グロース市場の場合は、証券取引所が記載様式を定めた「事業計画及び成長可能性に関する事項」(成長可能性資料)という上場日に開示する資料があり、この資料様式はロードショーマテリアルにも求められる内容でもあることから、予めこの成長可能性資料から作成し、ロードショーマテリアルとすることが一般的です。
なお、グロース市場に上場する企業には、投資家に合理的な投資判断を促す観点から、この成長可能性資料を上場後も継続的に開示することが求められております。
上場承認後から上場までの期間
証券取引所より上場承認を受けると、上場承認を受けた会社はファイナンスを発表(ローンチ)し、株式の勧誘活動に入ります。具体的には、まずはロードショーといって約2週間にわたって30~40社のプロ投資家といわれる機関投資家を相手に、ロードショーマテリアルを用い経営者自らが自社の魅力をアピールします。このロードショーでの機関投資家からの評価をもとに、仮条件、ブックビルディングを経てファイナンス時の公募売出価格が形成されていきます。
上場後は、全国の証券会社を介して、証券取引所にて、企業の株式を誰でも自由に売買できる状態になります。
なお、上場当日には、証券取引所にて実施する上場セレモニーや兜倶楽部での記者会見が行われます。会社によっては、上場記念パーティーを開催することがあります。
響きパートナーズ株式会社

響きパートナーズは、IPO支援を行なうコンサルティング会社です。ベンチャー企業の経営支援・IPO支援のプロフェッショナルとして、毎年、国内で上場する企業のおよそ10社に1社をご支援しています。当社では、IPOに関する課題をお持ちのお客様に、アドバイスだけでなくコンサルタントが実際に手を動かして、課題解決に向けて伴走支援いたします。
井熊 実
野村證券公開引受部、㈱エイチ・アイ・エス上場準備PJ統括、エイチ・エス証券取締役、事業会社取締役、SBI証券執行役員などを歴任し、2021年に響きパートナーズに参画。取締役パートナー。